【クラウド】IaaSからFaaSまで、5つのサービス形態の違いと使い分け

2025/9/6 公開
# AWS# Azure# 比較# クラウド

クラウドサービスには様々な形態があり、それぞれ異なる目的や用途に特化しています。 この記事では、代表的な5つのサービス形態について、初学者にも分かりやすく解説します。

はじめに

現代のソフトウェア開発やIT運営において、クラウドサービスは欠かせない存在となりました。 しかし、IaaS、PaaS、SaaS、BaaS、FaaSなどといった略語を見ても、どういう意味だろう、何が違うのだろう、と感じる方も少なくないのではないでしょうか。

これらのサービス形態を理解することで、プロジェクトに最適なクラウドサービスを選択できるようになります。 実際に、サーバーレスコンピューティングやクラウドサービスの採用は年々増加しており、現代のソフトウェア開発において重要な選択肢となっています。

1. IaaS(Infrastructure as a Service)

基本説明

IaaSは「インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス」の略で、仮想的なコンピューターのハードウェア(サーバー、ストレージ、ネットワーク)をインターネット経由で提供するサービスです。

物理的なサーバーを購入・設置・管理する代わりに、必要な時に必要な分だけクラウド上のリソースを借りることができます。

身近な例

例えるならば、土地を借りて自分で建物を建てるようなものです。 土地(物理的なハードウェア)、電気・水道の引き込み(基本的なネットワーク・電力)は提供されますが、建物の設計(OS)、内装(ミドルウェア)、家具(アプリケーション)は全て自分で選択・設置・管理する必要があります。自由度は最も高いですが、すべての責任も自分で負うことになります。

主要サービス

  • Amazon EC2(AWS)
  • Azure Virtual Machines(Microsoft)
  • Google Compute Engine(Google Cloud)

こんな時に使う

  • 既存のアプリケーションをクラウドに移行したい
  • インフラの完全な制御が必要
  • 特殊な設定やカスタマイズが必要
  • スケーラビリティを確保しつつコストを削減したい

2. PaaS(Platform as a Service)

基本説明

PaaSは「プラットフォーム・アズ・ア・サービス」の略で、アプリケーション開発・実行に必要なプラットフォーム全体(OS、開発ツール、データベース、ミドルウェア)をクラウドで提供するサービスです。

開発者はインフラやプラットフォームの管理を考えずに、アプリケーションの開発に集中できます。

身近な例

例えるならば、設備の整ったレンタルキッチンのようなものです。 調理器具、食器、基本調味料(開発環境)は全て揃っているので、材料(コード)を持ち込んで料理(アプリケーション)を作ることに専念できます。

主要サービス

  • Heroku
  • Google App Engine
  • Microsoft Azure App Service
  • AWS Elastic Beanstalk

こんな時に使う

  • アプリケーション開発を迅速に行いたい
  • インフラ管理にリソースを割きたくない
  • 開発チームの規模が小さい
  • プロトタイプやMVPを素早く作成したい

3. SaaS(Software as a Service)

基本説明

SaaSは「ソフトウェア・アズ・ア・サービス」の略で、完成されたソフトウェアアプリケーションをインターネット経由で提供するサービスです。

ユーザーはブラウザやアプリを通じてソフトウェアを利用でき、インストール、更新、保守などは全てサービス提供者が行います。

身近な例

例えるならば、レストランで完成した料理を食べるようなものです。 メニュー(機能)から選んで注文すれば、すぐに利用できる状態で提供されます。調理や後片付けを考える必要はありません。

主要サービス

  • Salesforce(CRM)
  • Microsoft 365(オフィススイート)
  • Google Workspace(生産性ツール)
  • Slack(コミュニケーション)
  • Zoom(ビデオ会議)

こんな時に使う

  • 業務ですぐに使えるツールが欲しい
  • IT管理にコストをかけたくない
  • どこからでもアクセスしたい
  • 定期的な機能アップデートを自動で受けたい

4. BaaS(Backend as a Service)

基本説明

BaaSは「バックエンド・アズ・ア・サービス」の略で、アプリケーションのバックエンド機能(データベース、認証、ファイルストレージ、プッシュ通知など)をクラウドで提供するサービスです。

Note MBaaS

特にモバイルアプリケーション開発に特化したサービスは「MBaaS(Mobile Backend as a Service)」と呼ばれ、より広範囲のバックエンドサービスを「BaaS」と呼んで区別されることが多いです。しかし実質的には同様の機能を提供するため、文脈によってはBaaSとMBaaSが同じ意味で使われることもあります。

参考:https://www.cloudflare.com/ja-jp/learning/serverless/glossary/backend-as-a-service-baas/

開発者はフロントエンド(ユーザーが直接触る部分)の開発に集中でき、複雑なサーバーサイドの実装を大幅に簡略化できます。API や SDK を通じて必要な機能を呼び出すだけで、サーバーの管理や保守を気にすることなく本格的なアプリケーションを構築できます。

身近な例

映画撮影で、監督(開発者)が演出だけに集中できるよう、照明、音響、カメラワークなどの技術的な部分を専門スタッフ(BaaS)が全て担当するようなものです。

主要サービス

  • Firebase(Google)
  • Supabase(オープンソース)
  • AWS Amplify(Amazon)

こんな時に使う

  • モバイルアプリやWebアプリを素早く開発したい
  • バックエンドの専門知識が不足している
  • ユーザー認証やデータ管理を簡単に実装したい
  • 小規模チームで効率的に開発したい

5. FaaS(Function as a Service)

基本説明

FaaSは「ファンクション・アズ・ア・サービス」の略で、個別の関数(処理の単位)を必要な時だけ実行できるサービスです。

サーバーの管理は一切不要で、実行された分だけ料金が発生する仕組みです。イベント(何かの出来事)をきっかけに自動的に関数が実行されます。

身近な例

例えるならば、必要な時だけ呼び出される専門サービスのようなものです。 写真をアップロードした瞬間に自動でサイズを変更する、注文が入った瞬間にメールを送信する、といった特定の作業だけを担当します。

主要サービス

  • AWS Lambda(Amazon)- Node.js、Python、Java、C#、Go、Ruby など幅広く対応
  • Azure Functions(Microsoft)- C#、JavaScript、Python、Java、PowerShell など
  • Google Cloud Functions(Google)- Node.js、Python、Go、Java、.NET など

こんな時に使う

  • 特定のイベントに反応する処理を自動化したい
  • 不規則に発生する処理を効率的に実行したい
  • サーバー管理の負担を完全に排除したい
  • 使った分だけ支払うコスト構造にしたい

サービス形態の比較表

項目IaaSPaaSSaaSBaaSFaaS
管理レベル高い中程度低い低い最低限
開発の自由度最大高い制限あり中程度特定用途
導入までの時間長い短い最短短い最短
技術的専門知識必要中程度不要少し必要中程度
コスト予測複雑やや複雑明確明確従量制

どれを選ぶかの選択指針

プロジェクトの性質で考える

企業システムの移行 → IaaS(既存システムをそのままクラウドに)

新規Webアプリケーション開発 → PaaS(開発に集中したい)

日常業務の効率化 → SaaS(すぐ使えるツールが欲しい)

モバイルアプリ開発 → BaaS(バックエンドを簡単に)

イベント駆動の自動化 → FaaS(特定処理の自動実行)

チームの状況で考える

ITエンジニアが多数在籍 → IaaS、PaaS(技術的制御を重視)

少数精鋭の開発チーム → BaaS、FaaS(管理負荷を軽減)

非エンジニア中心の組織 → SaaS(使いやすさを重視)

まとめ

クラウドサービスの5つの形態は、それぞれ異なるニーズに対応しています。プロジェクトの要件、チームのスキル、予算、将来の拡張性などを総合的に考慮して、最適なサービスを選択することが重要です。

実際の開発では、これらのサービスを組み合わせて使用することも多くあります。 例えば、メインアプリケーションはPaaSで開発し、特定の処理だけFaaSを使い、日常業務にはSaaSを利用するといった具合です。

まずは小さなプロジェクトから始めて、それぞれのサービスの特徴を実際に体験してみるのも良いですね。

参考